広さが大事 ①いまの中央図書館はかなり狭い
なにが「いい図書館」なのかについては、いろんな考えがあると思います。
とはいえ、
・本がたくさんある
・本を読んだり調べものをしたりできる場所(いす、机、テーブル)が十分にある
の2点が欠かせない要素であることには、あまり異論はないでしょう。
広くなければ、はじまらない
それら不可欠な条件を満たすうえで大事なのが「広さ」です。
多くの本を並べたり、保存したりするには、それなりの場所がいります。ある程度の閲覧席をつくるにもスペースがあってのことです。
さらに、読み聞かせをする部屋やカフェなどを設置するにも、空間がなくてはできません。
つまり、いい図書館には十分な「床面積」が必要なのです。
では、どれくらいの広さがあればいいのでしょうか。
それを考える前に、いまの西東京市の中央図書館の広さ、というか狭さについてみてみましょう。
本が床や廊下に置かれている
西東京市の中央図書館の延べ床面積(すべてのフロアの床面積の合計)は1,571平方メートルです。市内に6つある図書館の中では最大ですが、実際に利用した人ならご承知のとおり、かなりの「手狭感」があります。
きっと開架スペースが足りないからでしょう、子どもの本などは本棚に入り切らず、ケースや段ボール箱に入れて床に置いてあります(写真上2枚)。
閲覧席は「机あり」が53席、「机なし」が38席だけ。子ども(とその保護者)たちが床に座って絵本などを読める「おはなしコーナー」は、10畳ほどの広さしかありません。
2階の郷土資料室なんかは、狭い部屋の中に事務室が同居。本などの資料は廊下にまであふれ出ています(写真下)。
閲覧席のお粗末さ、郷土資料室(地域・行政資料室)の窮屈さ、蔵書庫の絶望的なスペース不足の状況は、「西東京市民会館、中央図書館・田無公民館 各施設の現状について」という資料(15年7月、市合築複合化基本プラン策定懇談会第1回)でも確認できます。
同じ規模のまちの半分以下
まちの図書館なんてどこもこんなようなもの――ではありません。西東京市の中央図書館は、広さの面で、結構ひどいんです。
日本図書館協会というところが毎年、全国の図書館について調査し、「日本の図書館」という統計書をまとめています。その2016年版をみると、人口15万~20万人の全国47市(人口約20万人の西東京市を含む)それぞれにある、最も大きな図書館(「中央図書館」という名前が多いですが、そうでないものもあります)の延べ床面積がわかります。
その平均は3,466平方メートル。繰り返しますが、これは「平均」です。
ということは、西東京市の中央図書館は、他の同じくらいの規模のまちにある図書館(最大)の「平均の半分」にも満たないのです。順位でいうと47市中、ビリから4番目です。
参考までに、47市のワースト(狭い)とベスト(広い)は以下のとおりです。
【ワースト】
①千葉県習志野市(谷津) 976 ㎡
②埼玉県久喜市(中央) 1,283
③埼玉県新座市(中央) 1,497
④東京都西東京市(中央) 1,571
⑤東京都東村山市(中央) 1,582
【ベスト】
②北海道帯広市 6,545
③愛知県豊川市(中央) 5,773
④神奈川県小田原市(かもめ) 5,657
近隣市と比べても半分以下
土地に余裕のない首都圏と余裕のある地方を比較するのはフェアじゃない、という考えもあるかもしれません(といっても、ベスト5に入っている小田原市も浦安市も首都圏ですが)。
そこで、別の比較をみてみましょう。
西東京市が2016年2月にまとめた「合築複合化基本プラン 策定に向けた提言」という文書には、西東京市の中央図書館と「人口・面積が西東京市と近い市及び西東京市に隣接している市」9市の中央図書館の比較表が出ています。
そこから、延べ床面積と人口、座席数を転記してみます(延べ床面積の小さい順)。
〈延べ床面積〉〈人口〉 〈座席〉
①西東京市 1,571 ㎡ 197 千人 91(53, 38)
②東村山市 1,582 153 121(110, 11)
③日野市 2,220 179 128(76, 52)
④東久留米市 2,545 116 100(54, 46)
⑤三鷹市 3,172 180 190(173, 17)
⑥調布市 3,611 223 201(102, 99)
⑦小平市 4,704 185 183(109, 74)
⑧立川市 4,951 178 253(158, 95)
⑨府中市 6,077 252 475(361, 114)
⑩武蔵野市 7,529 140 263(162, 101)
〈平均〉 3,797 180 200(135, 64)
※〈座席〉の内数は(座席あり, 座席なし)、合計は筆者が計算。〈平均〉の小数点以下は切り捨て。
ごらんのとおり、西東京市は狭さナンバーワン。近隣市と比べても、延べ床面積は平均の半分以下で、やはり狭さが目立ちます。
その影響で、座席の数も最小です。10市の中で唯一、100席未満となっています。
東京23区よりも狭い
では東京23区はどうでしょう。
都心部になるといっそう土地に余裕がなくて、西東京市より小さいんじゃないか――と思いきや、最小で大田区の2,150平方メートル。西東京市より狭い中央図書館はどこにもありませんでした。
最大は江戸川区の7,500平方メートルで、平均は4,094平方メートルです(以上、板橋区「今後の中央図書館の施設等検討会報告書」〈15年2月〉による)。西東京市の中央図書館が2つくっついても、まだ23区の平均に約900平方メートルも及ばないのです。
やっぱり狭いです、西東京市の中央図書館。
とはいえ、単に他のまちと比較して狭いからダメ、というものではありません。他のまちでそれなりの広さがあるのは、中央図書館にはそれだけの面積が必要だと考えられているからでしょう。ところが、西東京市の中央図書館には、そういう必要性から発想してつくられた形跡がないからダメだと思うのです。
では、どれくらいの広さが適当なんでしょうか。つぎに、それを考えてみます。